活動報告
2012年
■Oral Physician 海外研修 Advanced Continuing Education in Periodontics and Implantologyに向けて
熊谷 崇 (日吉歯科診療所)
Oral Physician育成セミナー本コースでは、歯科医療哲学、メディカルトリートメントモデル、メインテナンスシステムといった、歯科医療の根底を成す部分を中心にプログラムを組んでいます。というのも、これらの点が、日本の歯科医療と世界標準の歯科医療と比較した際に、日本が最も遅れている部分と感じているためです。しかしながら、予防やメインテナンスで歯科疾患の全てが解決されるわけではありません。予防を突き詰めれば突き詰める程、予防の効果が見えてきますが、同時に限界というものも見えてきて、質の高い治療の必要性を感じます。削らない手法と削る手法という言い方をすると、予防と治療は、あたかも対極を成すもののように感じますが、実際には、予防と治療は対極でなく、両輪もしくは両翼を成すものです。
そこでOral Physician育成セミナーでは、Advanced Courseとして、「SRPセミナー」「CRセミナー」「リスク評価セミナー」「口腔内写真撮影セミナー」そして、「海外研修」などを行っています。
現在「歯周再生療法とインプラント治療」をテーマに2012年の海外研修を企画しています。日程は、6月に東京で2日間のインプラント治療に関する講義、埋入実習、10月にNebraska州Omahaで3日間のインプラント治療に関する講義、解剖実習、11月にTexas州Houstonで歯周再生療法とインプラント治療に関する5日間の講義、実習、ライブオペ見学を予定しています。メイン講師は、2010年に引き続き、米国歯周病専門医で、元米国歯周病学会会長であるTexas州HoustonのMichael K. McGuire先生とTodd E. Scheyer先生、宮本貴成先生をはじめとするNebraska州OmahaのCreighton大学講師陣です。
さて、オーラルフィジシャン育成セミナーは、科学に立脚し予防をベースにした新しい歯科医療を展開できる歯科医師および医療スタッフを育成するために立ち上げられ、これまで多くの歯科医師や歯科衛生士に参加していただきました。日本中に「健康な口腔を守る」というコンセプトをもつ歯科診療所が増えていることを大変嬉しく思っています。
しかし、オーラルフィジシャン育成セミナーで提唱しているメディカルトリートメントモデル(MTM)の実践はそのような診療所の基本的な診療システムとしては重要ですが、診療所を訪れる多くの患者さんに真の利益を提供するためには歯周外科治療やインプラントも含めた修復補綴処置などにおいても、最新の科学に裏打ちされた一定レベル以上の技量を備えていることが必要であり、そのような知識や技術が無ければオーラルフィジシャン診療所としての本当の意味での価値を見いだすことができません。
ところが、日本では多くの歯科医療者が保険医療を前提に診療を行っているために、歯周治療や修復補綴など日常的に行っている治療ですら、考え方や術式が、トレーニング不足のために技術が伴っていないことが多くみられます。
私はオーラルフィジシャン診療所としてその理念を共有し、一定以上のMTMの実践が行われている診療所を対象に、本当の意味で力のあるオーラルフィジシャン診療所になっていただくために、これまでも多くの国内外の講師による研修セミナーを行ってきました。今回のセミナーもそうした考え方にそった研修プログラムで、他で様々に行われている同様なセミナーと比べても、その充実した内容と質の高さにおいて比べようも無いほど突出したものであると確信しています。そのような意味において、今回参加された皆様は大変幸運な方々です。
今回のプログラムは、日吉歯科診療所のこれまでの活動に対して理解を示し、賛同して下さったMichael McGuire先生とクレイトン大学の全面的な支援と同大学の歯周病学教授宮本貴成先生によって実施されるものです。McGuire先生はアメリカでもっとも人気の高い歯周病専門医であり、先生の診療所を訪問できることなど通常では考えられにことなのです。
このようなプログラムを今後も継続するためにも、今回のセミナーの参加者の皆さん一人ひとりの本気さや意気込みが講師陣やサポートして下さる方々にしっかりと伝わるようであれば嬉しく思います。
残念ながら、私自身は今回同行することができませんが、今月初めにオマハのクレイトン大学に赴き、McGuire先生、クレイトン大学の方々、宮本先生と打ち合わせをしてまいりました。そのような話し合いに基づいて、予定通りのプログラムが実施される手はずとなっております。かけがえの無い機会をどうぞ各自有効に使って研鑽に務めていただきたいと思います。
今回のオマハ・ヒューストン研修においては、私の名代として延徳歯科医院仲川隆之がとりまとめ役として同行しております。もし、現地で研修期間中に何か問題がある時は、遠慮なく仲川まで申し出て下さい。
最後に、今回の研修においては、前出の先生方の他に、シロナデンタルシステムズ株式会社とアストラテック株式会社の全面的なサポートも受けております。両社の支援によって、今回の旅行や滞在に様々な配慮をいただいておりますこともご理解いただきますようにお願いいたします。
それでは皆さんいってらっしゃい。今回の研修がこれからの日本の歯科医療を変える一里塚となるように、皆様の健闘を祈っております。
■PHIJ2012総括
コースコーディネーター:仲川 隆之(延徳歯科医院)
2010年に引き続き、第2回目となるPHIJ2012が開催されました。今回も、Michel K. McGuire先生、E. Todd Scheyer先生、Takanari Miyamoto先生という、3名の米国歯周病専門医がコースディレクターとなり、歯周治療、インプラント治療のベーシックからアドバンスまでを、余すところなく網羅した、非常に中身の濃い研修となりました。以下に今回のコースの概要、写真、参加者の感想を掲載します。
【コースディレクター】
- <Michel K. McGuire先生>
- 歯周病専門医、テキサス州ヒューストン開業、元米国歯周病学会会長
- <E. Todd Scheyer先生>
- 歯周病専門医、テキサス州ヒューストン開業
- <Takanari Miyamoto先生>
- 歯周病専門医、ネブラスカ州オマハ開業、クレイトン大学歯周病学科主任教授
【東京プログラム】
- <日程>
- ・2012年6月15,16日
- <概要>
- ・歯周治療、インプラント治療に必要な診査、診断方法
- ・ソケットプリザベーションに関する講義と実習
- ・インプラントの埋入と印象に関する講義と実習など
- <講師>
- ・Michel K. McGuire先生
- ・E. Todd Scheyer先生
- ・Takanari Miyamoto先生
【オマハプログラム】
- <日程>
- ・2012年10月27,28,29日
- <概要>
- ・無歯顎献体を用いた解剖実習
- ・歯周病学、インプラント治療における最新のトピックに関する講義
- ・歯周治療、インプラント治療に必要な解剖学に関する講義
- ・歯周治療、インプラント治療に必要な放射線診断学に関する講義など
- <講師>
- ・Michel K. McGuire先生
- ・E. Todd Scheyer先生
- ・Takanari Miyamoto先生
- ・Neil S. Norton先生
- ・Douglas K. Benn先生
【ヒューストンプログラム】
- <日程>
- ・2012年10月31日〜11月4日
- <概要>
- ・包括的口腔内診査に関する講義と実習
- ・非外科的歯周治療、外科的歯周治療、歯周形成外科に関する講義と手術見学
- ・ソケットプリザベーション、インプラント埋入に関する講義と手術見学
- ・コンピューターガイデッドサージェリーに関する講義と手術見学
- ・プロビジョナルレストレーションに関する講義と実習
- ・医院経営に関する講義など
- <講師>
- ・Michel K. McGuire先生
- ・E. Todd Scheyer先生
- ・Takanari Miyamoto先生
- ・Rick H. Heard先生
- ・Alessandro Geminiani先生
■感想文
◆PHIJ2012に参加して
「世界の歯科医療は進歩している。」
「学ぶことは、変化することだ。変化することは、成長することだ。」
PHIJ2012は、確実に変化して成長を遂げていました。そして、これからもどんどん変化し続けるだろうと感じました。
セミナーを通して、「私たちの実践してきたことは間違いない。しかし、私たちのミッションを実現するためには、常に世界に目を向け続けなければならない。そしてもっともっと学び続けなければならない。」と、私は確信しました。
三度目のヒューストンでした。同じところに三度も訪れるとは思ってもみませんでした。しかし、今は、それが必然だった感じています。繰り返しの受講が、確実に自分を変えていると感じます。いま、目の前で、当たり前に行われていることが、世界トップの歯科医療だということに感銘しました。こんな幸せがあるだろうかと。
同時に、「一分一秒もむだにできない。私たちも世界の当たり前の一員になれるようにとてつもない多くのことを学び、一つひとつが厚みのある貴重な教えを自分のものにし、それらを真の患者利益に繋げていくために、本当に時間が足りない。」と感じています。
残念ながら、私は、オマハ研修には参加できませんでしたが、オマハにおける解剖という基本から始まってヒューストンでの、歯周治療の診査診断、治療計画、SRP、再評価の大切さ、歯周外科、インプラント治療、それらを成功に導く診療室のマネージメントと中身の濃い充実した毎日でした。特に、診査診断、治療計画、予後予測がしっかりしていることで、処置が確実にシンプルに行えるようになることを学びました。
前回よりもはるかに整理され理解しやすい内容でした。一つひとつの内容もしっかりブラッシュアップされていて、本当に世界の最先端の当たり前がちりばめられていました。私自身のアンテナや診療経験も変化して、前回と聞こえることやその質は大きく違っていました。今回学んだことを次回まで徹底的に実践して、次回さらに学びたい。そんな思いで帰国の途についています。
多くの関係者に心から感謝したいと思います。宮本先生、Dr.McGuire、Dr.Scheyer。そして、今回も献身的にコーディネートしていただいた仲川先生。しっかりサポートしていただいた福田先生。とてもわかりやすく通訳していただいた岩上さん。心温まる歓迎をしていただいたCindyさんはじめとした診療室のスタッフの方々。そして、スポンサーとして様々な後押しをしてくださった、アストラテック。シロナ。両企業の方たち。本当にありがとうございました。そして、なにより参加した皆さんの力がセミナーに大いに反映していたと感じました。
『世界の歯科医療は進歩している。
私たちは、学び続けることを条件に歯科医師という資格をもらっている。
学ぶことをやめた瞬間に歯科医師としての価値はなくなる。』そんな思いが強くしています。
PHIJはこれからも続きます。世界の当たり前を自分たちの当たり前にするために、ふたたびオマハ、ヒューストンで学びたいと強く思いました。
日吉歯科診療所:熊谷 昌大
◆2012PHIJに参加して
アメリカが大統領選挙で盛り上がっている中、2012PHIJオマハ・ヒューストンコースが開催された。私にとって、2010PHIJに続き二回目の参加となったが、前回とは環境が大きく変わった中での参加となった。なぜなら私は2011年春からクレイトン大学、歯周病専門医のオフィス、語学学校をベースにアメリカでの生活をスタートしていたからである。このような環境の中、2012PHIJに参加することが決まったとき、間違いなく前回よりも良い研修になると確信していた。私は今回参加する際にいくつかの目的を立てていた。①口腔周囲の解剖学・CT画像読影法の再確認、②歯周病学、インプラント学の再確認、③アメリカにおける歯周病専門医の役割、④歯周病専門医のオフィスで働くスタッフの役割(歯科衛生士、アシスタント、受付など)、⑤イメージングセンターとの連携について、以上が今回自分の中の柱として学んでいこうと考えていたことだった。
まず参加して思ったことは、すべての内容がアップグレードされていたことだった。全てのトピックに最新の情報が組み込まれていることはもちろん、前回のPHIJよりさらにオーガナイズされたプログラムに変わっていた。このPHIJというコースは、参加するたびに新たな発見や知識を得ることができ、さらに知識の整理整頓をすることもできるので、何度参加しても価値があるコースだとあらためて感じた。さらに今回強く感じたことは、現地でドクターやスタッフと直接会話ができると今まで以上に得るものが大きかったということだった。私は今までに何度か海外研修を経験したことがあったが、全て通訳を介した一方通行型の参加スタイルだった。しかしながら、今回は時間があれば自分からドクターやスタッフたちにインタビューすることができたので、とても有意義に時間を使うことができた研修だったと思う。
最後に、2012PHIJコースを締めくくる最後のトピックでマクガイアー先生が "Strategies for Success /Vision to Reality" というタイトルで2時間以上にわたり話しをしてくれました。内容はChange Initiatives, Megahands, Inspiration, Action & Plan, Relationship, Implementationという6つの項目についてでしたが、日吉歯科診療所の熊谷崇がオーラルフィジシャンセミナーなどで話してきた内容、考え方とほとんど同じだった。国、文化、環境は違うにしても、一流のたどり着く場所は同じなのだなと感じた。自分が彼らと同じ年齢になった時に、それ以上の場所にたどり着けるように自分がやるべきことをコツコツ積み上げていきたいと思う。
ササキデンタルクリニック:佐々木 成高
■PHIJに参加して
米国における、世界一流の基礎歯科医学教育と、診療哲学に基づいた臨床歯科医学とは何かを、体感した12日間であった。
最初の訪問先、オマハのクレイトン大学では、世界のベストセラーである「ネッター解剖図譜」の著者、ノートン先生による解剖学の講義と実習を受講した。口腔外科処置、特にインプラント埋入手術を施行する際に知っておかなければならない口腔と鼻腔の解剖を中心に、各レイヤーにわけてわかりやすく解説して頂いた。その中で特に驚かされたのは、実習中に我々が確認したい神経、血管を確実に提示してくれたことである。卒直後からベテランの歯科医師まで、全ての受講者を満足させる講義内容は流石の一言に尽きる。
次の訪問先のヒューストンでは、AAP前会長のマクガイヤー先生とシャイヤー先生より、歯周病の基本的な診査、診断からインプラント治療を含めた最新の内容まで、講義とライブオペを中心に実習も交えて、余す所なく解説して頂いた。その歯科医療哲学は、全ての診断・治療計画・メインテナンスにいたるまで、患者の利益を最優先に考えた包括的な歯科医療を提供することであった。その哲学を理解した歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付秘書が、一つのチームとして機能する診療室を作り上げ、それを30年以上に渡って継続するのは大変困難なことであったと思う。それを妥協することなく実践できるのが、世界の一流と言われる所以であることが理解できた。
患者が受ける真の利益とは何かを考え、それを臨床の現場で実践する姿勢は、本邦における日吉歯科診療所の熊谷先生を中心とした、斎藤先生他のオーラルフィジシャンの方々に相通じるものを感じた。
PHIJは歯周病とインプラントの技術的なことを学ぶだけではなく、エビデンスに基づいた包括的な歯科医療を提供することが、真の患者利益に繋がることを再認識できる素晴らしい研修会であったと思う。
最後に、本研修会を企画して頂いた、熊谷先生、宮本先生、ノートン先生、マクガイヤー先生、シャイヤー先生、引率の仲川先生、通訳の築山先生と、受講生の皆様に感謝致します。
Mデンタルクリニック松野歯科:松野 英幸
◆オマハ
シロナでのノートン先生の講演と同じく、オマハでのレクチャー、解剖実習は実に明解で分かり易いものでした。また解剖でのカダバーが新鮮であるがゆえに、組織を扱う感触が実際の手術に近く、より実践的な実習を経験できたことは他のいかなるセミナーでも得ることのできない貴重な物でした。この実習はノートン先生を初め、その医局の方、他の講座の先生方、宮本先生の教え子の方など多くの先生方のサポートで支えられており、それをマネージメントして下さった宮本先生に何よりも感謝しております。
◆ヒューストン
マクガイヤー先生のオフィスでのセミナーは、同一のテーマでレクチャー+ライブオペで組み立てられており大変理解しやすい構成でした。レクチャー内容は全てが実際の臨床から得られた結果の集大成にて、疑問を抱かせることのない大変明確な内容でした。手術中の執刀医は大変集中するので、とかく他者の介入を嫌いますが、ライブオペ中の参加者からの質問に、必ず手を止めてていねいに回答して下さる先生方の姿勢に敬服の念を抱きました。またシャイヤー先生の厳しい雰囲気から如何にPHIJに真剣に向き合って下さっているかが伝わり、そのご恩に報いるためにより多くのものを持ち帰れるよう必死で受講致しました。
このかけがえの無いPHIJをマネージメントして下さった諸先生方に感謝します。
緑町斎藤歯科医院:内田 敦
◆PHIJ2012
全体を通して歯科医師として3年目の私には、ものすごく刺激的であり、興味深く学ばせて頂きました。このような素晴らしい機会に巡り合えたことに感謝します。
最初に訪れたオマハで最も印象に残っているのは、やはりカダバーを使った実習です。
CTで確認し、インプラントを埋入させて頂きました。特にソケットリフトを行ったことのない私にとって初めての経験であり、同じグループの経験豊かな先生方に教えて頂きながら貴重な実習を行いました。そして、ノートン先生の詳しい解説をしながらの解剖は、初めて目にする光景でした。学生時代にノートン先生の授業を受けていたらと思ったのは、私だけではないと思います。
ヒューストンでは、診療所全体を使用し、講義、実習、見学をさせて頂きました。特に驚いたのは、数多くのライブサージェリーを見学できたことです。マグワイヤー、シャイヤー両先生の技術を始めとし、アシスタントの動きには感動を覚えました。プライバシーの観念が特に厳しいと感じるアメリカで見学を許可して頂いた患者さん方、ありがとうございました。この素晴らしい経験を通し、日々の臨床に活かしていきたいと思います。
シャイヤー先生が、私たちは歯科医で、マジシャンではない!と言った一言は、私の心に刻まれました。一つ一つ基本からと解釈しております。最後の日は、感動と感激で涙が溢れていました。マグワイヤー先生の哲学を少しでも知ることができたことに感動しています。
最後に、このような素晴らしい研修を企画して実行して下さった全ての方、ありがとうございました。同じグループになった先生方御迷惑お掛けしました。そして、出会えた全ての方々、ありがとうございました。経験豊かな先生から、若手の先生まで、お話することができて色々な事を学べました。歯科界を少しでも良くしていければと思った次第です。
医療法人社団雄之会 つきやま歯科医院:築山 鉄平
◆PHIJ2012感想文
思い起こせば2004年歯科医師である父の諌言で熊谷先生を通じて紹介して頂いた宮本貴成先生との出会いが全ての始まりだったのかもしれません。私は一語学留学生、彼は歯周学で名声轟くボストン大学歯周科facultyでした。そんな立場の私に熱く語りかけるその姿勢はとても私の1つ年上と思えないほど、信念に満ちあふれていたのを覚えています。また2006年に熊谷直大先生とタフツ大学post-graduate programで同級生となり、診療に打ち込む姿勢の実直さ、熱意、忍耐に感銘を受け、その源である熊谷先生の門を叩く事になりました。当時、当院の予防に対する手法が「つきやま歯科」流に陥っていたため米国から帰国したばかりの私は「予防のつきやま歯科」として福岡では自負していた当院の在り方に疑問符をつける毎日で、解決方法を見いだせずにさまよっていた所に直大先生の導きから熊谷崇先生に辿り着く事になった訳です。
それが2011年10月の事ですが、そこから先は烈火の如くのスピードで当院も変革をたどり「つきやま歯科」流から真の「グローバルスタンダード」へ進化しつつあると自負できます。「オーラルフィジシャンとしての在り方」「メディカルトリートメントモデル」は欧米諸国の歯科先進国では日常的に行われている事であり、更にその先にあるであろう「GPと専門医が役割を明確にしたチーム医療」を実現するために明確なビジョンを培うために今回のPHIJに参加致しました。
では数ある海外コースの中からなぜPHIJに選んだか?
大きな理由はDr. McGuireがプログラム主催であったから、この一言に集約されると思います。彼のような偉大な歯周病専門医のもとで勉強できる機会は米国でも稀有で、しかも熊谷先生、宮本先生の導きとなると全てが1本の線で繋がっているはずです。
Dr. McGuireの名声を確固たるものにした「Prognosis vs Actual outcome」の論文ではそれまで経験則でしか導く事ができなかった治療結果の予後を初めて科学的に分析し、それまでの歯周病学のありかたに一石を投じました。それが1991年の事。今から21年前の事ですが今でも議論の中心となるその存在感にDr. McGuireの先見性と、2000年になっても次々とcorner stone的な論文を発表される、たゆまぬ情熱、錆び付かない信念をresidentの時に感じていました。それは常に進化を続ける熊谷先生と共通する部分が多く、これから私達若い世代が歩みを止めない事のrole modelだと感じました。
彼のペリオのコンセプトは私が考えるペリオのベーシックと何ら変わる所がなく逆に自分の自信を裏付けるものになりました。GPと専門医がタイアップする事が日常のアメリカ社会でもう一歩進んだホスピタリティーのあり方やcustomer satisfactionへの取り組みは、同じく歯科先進国スウェーデンのカロリンスカ研究所教授Sandberg先生がチームミーティングでの講演で発表されていた事と非常に共通する部分が多く、専門医療の先にはこのような取り組みがいずれ必要であるように感じます。日本のように未熟な歯科医療制度の中で、患者の希望だけを満たそうとする患者主導のcustomer satisfactionは歯科医療の価値観崩壊を招く可能性もあり、日本歯科界にはまだ早いと思われます。McGuire先生のオフィス設備、環境、サポーティングスタッフの意識の高さ、技術、診療哲学には、日吉歯科診療所と共通する面も多く、オーラルフィジシャン育成セミナー受講生にとっては目指す方向が確固たるものだと自信を持った事だと思います。扉をくぐった段階で今までの歯科医院とは違うと感じる事ができる、これも1つの付加価値でしょう。
オマハコースはPHIJに限らず歯周学、インプラント学を学ぼうとする先生には必ず受講して頂きたい内容です。学生の頃、あれだけ嫌だった解剖学がみるみるうちにDr. Nortonに紐解かれていく。頭がより整理整頓されて行くのをたった3日間で実感すると同時に、定期的なreviewも不可欠であるということも痛感しました。また近いうちに参加させて頂けたらと思います。
父親→熊谷崇先生→宮本貴成先生→熊谷直大先生→オーラルフィジシャン育成セミナー→熊谷崇先生→宮本先生→Dr. McGuire→自院→地域→日本→世界。いかに自分の残り短い約40年間の歯科医師人生を日本歯科医療に貢献していくか。少しずつビジョンが明確になってきました。様々な素晴らしいmentorを自分の周りに持つ事。この情報メタボな時代に洗練された方々にお会いする事ができたこの環境に感謝したいと思います。
最後にコース講師陣はもちろんのこと、円滑なコース運営にご尽力いただいた仲川先生、福田先生、Patriciaさん、Cindyさん、岩上さん、トップツアーの浜田さんに感謝の意を表したいと思います。10日間、本当にありがとうございました。
日吉歯科診療所:市野 孝昌
◆PHIJヒューストン研修を終えて
今回のヒューストン研修は過去に参加した研修に比べ何倍もの刺激と驚きを体感したすばらしいものでした。その中でも、実際のアメリカ歯周病専門医の診療室にて世界標準の教育を学び、外科手術を見学できる機会は私にとって忘れられない貴重な経験となりました。日本から来た私たちを笑顔で受け入れて頂き、私たちへの教育を全力で行うために診療室も手術見学のみの患者さんに限定した体制で私たちを迎えて頂けたことに、マックガイヤー先生、シャイヤー先生、診療室のスタッフの皆さんに深く感謝申し上げます。
今回の研修を通じて、以下2つの点について強く感じました。1つ目は、アメリカの歯科医療は、ベストな治療を達成するために、エビデンスに基づいた知識をベースとした包括的な歯科医療を徹底していることです。包括的な歯科医療を行うために、問診から再評価、外科的治療に至る過程の中で、かなり詳細な検査項目と資料採取は、根拠をベースとした治療計画立案においてとても重要であると実感しました。また、その術式に至った理由については、論文をベースとした根拠を明確にし、術後の経過状況ついて写真で確認することで成功率の高い医療を実践していることがよくわかりました。
手術中においても一つ一つの手技的でテクニカルなアドバイスを隠すことなくオープンな環境の中で学ぶ事ができたこと、わからない内容についてもその場で忌憚なく質問ができたことで、経験の浅い私でも理解することができました。私は、専門医治療については理解しているつもりでしたが、講義を受け診療見学をすることで一つ一つが繋がり、より深く専門医の役割や診療について知ることができました。
2つ目は、マックガイヤー先生、シャイヤー先生、診療室のスタッフの皆さんの歯科医療に対する情熱やハートの熱さをダイレクトに感じました。最高の医療を提供するために学ぶことを怠らない、医療を追求する姿を見て私はとても興奮しました。特に、マックガイヤー先生、シャイヤー先生はスタッフ教育とマネージメントを中心としたチーム医療に重点を置かれていました。それは、専門医診療室全体で同じ目標を持ち、互いが尊重し合い、全てのスタッフが診療室を誇りに思っている。また、ベストな治療を行うために、歯科衛生士も論文から学び、自分の仕事にプライドを持ち、本当の意味でのプロフェッショナルな仕事をみることができました。
今回の研修内容は、毎日がとても充実したカリキュラムで、研修から得たものはとても大きく、その価値は金額をはるかに上回るものでした。すべて実践的な内容であり、今後の私の臨床に活かしていきたいと思います。ぜひ、次回のPHIJの開催が決まれば参加したいです。
最後に、PHIJ2012をサポートして頂いたマックガイヤー先生、シャイヤー先生、診療室のスタッフの皆さん、宮本貴成先生、仲川隆之先生、築山鉄平先生、シロナデンタルシステムズ、デンツプライ(旧アストラテック)本当にありがとうございました。
こころ歯科クリニック:山崎 卓
◆PHIJオマハ‐ヒューストン研修会
2012年3月の若い歯科医師のためのオーラルフィジシャンセミナーに参加し、今回の海外研修のことを知りました。以前より、海外研修に参加したいと考えていたのですが、なかなか踏み出せずにいたところでした。僕は代診という身分なのですが、その場の勢いで院長に相談する前に即日申し込みをしてしまいました。
カダバー実習と海外の診療所見学ができるということで、研修会への参加を決めました。英語も全く話せないのですが、通訳をしていただけるということで、不安もなくすごく楽しみでした。
東京コースから始まり、歯周病とインプラントの基礎をしっかりと学んで、さらにコーディネーターの仲川先生との運命的な出会いもあり、オマハ‐ヒューストンにますます期待が高まっていきました。
いよいよオマハでの研修です。飛行機恐怖症なのを忘れていました。
さらに、入国審査で引っかかってしまい、みなさんとはぐれる始末…。乗り継ぎの飛行機にも乗れず、ひとりぼっち。。。というアクシデントもありつつ、SIRONAの栗木社長に助けて頂き、一緒にデンバーまで飛んでいただきました。本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。
なんとか無事に皆さんと合流でき、オマハでは解剖の実習をメインにみっちり講義でへとへとになりました。すごく穏やかで静かな町で、勉強には持って来いの場所でした。あっという間に3日が過ぎ、ヒューストンへと移動。
オマハとは違って、ヒューストンは大都市でした。
少し郊外に診療所があり、朝から晩まで講義とライブオペという、かなりハードな日程でしたが、毎日が新鮮で、すごく充実した内容でした。何よりも、世界でもトップのオペを目の前で体験できたのは、最高でした。
研修会を通してたくさんのことを学べたこと、体験できたことはすごくいい経験になりました。英語に対しての苦手意識がなくなったこと、飛行機恐怖症も治りました。
PS 帰宅時に成田空港で外人さんに道を聞かれました。今までは、答えられずに恥ずかしい思いをしていましたが、きちんと答えることができました。
森宿歯科医院:佐藤 克典
◆PHIJ海外研修2012(ヒューストン研修)に参加して
今回、PHIJ海外研修としては2010年に続き2回目の参加となりました。日程の都合でオマハでの研修は欠席させていただき、ヒューストンからの参加となりました。2、3日前にハリケーンがニューヨーク市に接近し非常事態宣言が出されるなか、無事ヒューストンに出発できるか一抹の不安を抱えながら10月30日(火曜日)に成田へと向かいました。成田空港でユナイテッデ航空が予定通り出発できることを確認し、ほっと胸をなでおろし集合場所に向かいました。ニューヨークで被害にあわれている方々には心から災害からの復興をお祈りいたします。空港での搭乗手続きを無事終え、飛行機が出発しました。オーラルフィジシャンやPHIJの研修では必ずアクシデントが起こってきた過程があり、まだまだ安心できないと思っていると、座席のモニターのヘッドフォンから音が片側から出ず、しばらく使っていましたがその不具合に耐えられなくなり、添乗員さんに交換してもらい快適に過ごしていました。しばらくすると隣の乗客の方が席を立つので無意識に立ち上がったところ、ヘッドフォンの接続部が根元から折れてしまいました。全く使えなくなってしまい事情を説明し、再び新しいものに交換してもらいました。初めから嫌な予感が脳裏をよぎりました。しばらくし、無事ヒューストンに到着し、安心していたところ、入国審査に多くの行列が並んでいました。一度に飛行機が重なって到着したためか、荷物を受けとって空港を出るまでに到着から2時間が過ぎていました。その後は迎えに来てくれていた現地の方にはすぐに会え、ホテルに無事到着することができました。大きなアクシデントではなくプチアクシデントでした。その日は時差を解消するために、早めに就寝しました。
10月31日(水曜日)
研修一日目が始まりました。今回はトップツアーのガイドの方がついていてくださいましたので予定や案内は安心でした。バスの運転手さんが道を間違いマクガイアー先生のオフィスに到着するのがやや遅れてしまいましたがマクガイアー先生やシャイアー先生、スタッフの方々が2年前と変わらぬ笑顔で出迎えてくれました。当日はハロウィンでしたので、机の上にはモンスターのお面とお菓子が置いてありました。ウエルカムスピーチのあと講義が始まりました。
今日のテーマはComprehensive Periodontal Examination(包括的歯周検査)についての講義でした。マクガイアー先生のオフィスで使用している検査票の説明から手順、使用している機材の説明があり初診時の検査について確認できました。講義の後すぐに初診診査のハンズオン実習があり、参加者を3つのグループに分け、実際にスタッフを患者さんの役にして初診診査を行ってくれました。講義のあとのすぐの実習でしたのでより理解が深まりました。自分はマクガイアー先生が担当のグループでしたので、実際のマクガイアー先生の診療姿勢が垣間見れたので、とてもよかったです。また歯周検査の入力がコンピュータソフトに入力されるようになっていたので、すぐにデータを患者さんに印刷し説明できたり、スタッフと共有できるのもよいなと思いました。説明のあと2人ずつのペアに分かれ、マクガイアー先生のオフィスの衛生士さんに担当として就いてもらい、実際にお互いの初診診査と口腔内のがん検査、歯周検査をおこないました。先ほどマクガイアー先生に実演していただいたことをすぐ実践できたのでより理解が深まり、またそれを確認して、できていないところを指摘して頂いたので、自分のできていることと、できていない所がわかりとてもよかったです。朝のバスの遅れの分、宮本先生による包括的な治療計画の立案についての講義は昼食をとりつつのものとなりました。Prognosis(診断)の重要性についての講義で、Prognosis(診断)とは航海でいう地図のようなもので、目的地に行くのに地図がなければ、間違ったゴールに進んでしまったり、たとえゴールついても遠回りをしてしまうことがある。またそれをクルー(スタッフや患者さん)と共有しなければ、クルーは何をすればよいかわからないと説明があり、まさにその通りであると思いました。症例を通して診断の手順や、現在進行中の歯牙の残存リスクを診断するCART(Classification And Regression Trees)についての説明もあり、これが完成すれば歯牙の予後予測に大きく貢献することができる素晴らしいものであると思いました。
つづいてシャイアー先生による非外科的歯周治療について、抗菌剤、化学療法の講義がおこなわれました。一番重要なのは何がゴールであるかということで、歯周治療のゴールはバクテリアを除去すること、つまりバイオフィルムの除去をし、再付着を防ぐ事であると説明がありました。非外科的歯周治療の限界や内視鏡を使った新しい方法や抗菌剤、化学療法の現在の効果について解説があり、抗生物質などはそれのみでは最終的な効果がなく、局所的な投与はSCやSRPには必要ではなく、メインテナンス中に投与するのは効果的である。また抗生剤は耐性菌を作る可能性があり、あまり使用しないほうがよいとも解説されました。つづいて非外科的歯周治療のハンズオン実習があり、午前中に行った実習の検査部位の歯石除去の実習を行いました。これも担当して頂いた衛生士さんに確認してもらい、できていないところを指摘して頂いたので、自分のできていることと、できていない所がわかりとてもよかったです。
その後グループディスカッションにて質疑応答があり、最後にハロウィンのお面をかぶり全員で記念写真を撮りました。充実した一日が終わりました。
11月1日(木曜日)
研修2日目が開始しました。この日は午前中から手術見学があるので少し早めにホテルを出発し、マクガイアー先生のオフィスに向かいました。今日のテーマはPeriodontal Surgical Therapy(歯周外科治療)でした。まず講義にてOsseous Surgery(Resective Surgery)について解説がありました。Pocket EliminationとClinical Crown Lengthening の術式と使用する器材、臨床例などが整然とまとめられ、とても理解しやすく実際の臨床に生かせる講義でした。講義の後はそれぞれの手術見学でマクガイアー先生がPocket Eliminationをシャイアー先生がClinical Crown Lengtheningを担当しました。講義を聴いてすぐに実際の手術を見学できたのでより理解が深まりました。昼食をはさみ午後はExtractionとRidge Preservation/Augmentationがテーマでした。患者さんが不幸にして歯を抜かなければならなくなった際に、いかに低侵襲で抜歯し歯槽骨の骨を残すかということが解説されました。抜歯窩の状態による分類からその処置法、その後のオベイトポンティックについての解説と臨床例の治療手順の説明がありとてもわかりやすく、まとめられておりました。そして講義の後、すぐに実際の手術見学があり、座学で得た知識をすぐ実際の臨床で体験できるので、とても記憶に残りました。
手術見学の後はグループディスカッションがあり、今日は今回の研修でのグループ課題についてのグループディスカッションでした。5グループの中でB班、E班、C班のグループ課題について、各班の代表者がそれぞれのまとめたレポートを報告しました。まずB班の築山鉄平先生が指名され、来年の1月にほかの研修会にてプレゼンする予定の資料とともに今回のテーマである「インプラントの永続性について、どのぐらいの期間インプラントは機能するのか」をプレゼンしました。ブローネマルク先生のインプラント症例から始まるインプラントの歴史と今現在使われているインプラントの状況やそれを取り巻く環境、患者の年齢などの関連性について判り易くまとめてありました。続いて、E班の新福泰弘先生が「インプラントに角化歯肉は必要か? 必要ならばどの程度必要か?」をプレゼンしました。新福先生の診療所の取り組みとともに、多くの文献からの総括を取り入れた内容の報告でした。最後にC班の松本敏光先生が「歯周疾患を持つ患者にインプラントを用いることができるか、なぜ良いのか、もしくはなぜ悪いのか」をプレゼンしました。今回ご夫婦で参加され、お二人でまとめられたインプラント治療の歯周病へのメリット、デメリットなどが判り易くまとめられておりました。参加者の活発な質疑応答があり今日の予定が終了しました。
11月2日(金曜日)
研修3日目が始まりました。今日のテーマはPeriodontal Surgical Therapy(歯周外科治療)2ということでFree Gingival Graft(遊離歯肉移植術)がテーマでした。まずはマクガイアー先生の講義でなぜ、いつ、どのようにして遊離歯肉移植術を行うのかについて講義が行われました。診断と分類につづき移植片の採取の仕方やConnective Tissue Grafts(結合組織移植術)との比較、若年者への年齢的な適応時期など知りたい内容が豊富な講義でした
講義の次はオペ見学の実習でマクガイアー先生のFree Gingival Graftとシャイアー先生によるConnective Tissue Graftsのオペでした。マクガイアー先生のオペは手際よく30分ぐらいで終わってしまいました。その手際の良さとそれを支える助手が徹底的に訓練されていることを痛感する瞬間でした。引き続き、シャイアー先生のオペの見学をしましたが、トンネリングテクニックを利用した難易度の高い手術でした。切開の方法と移植片をいかに固定し位置づけするのかよくわかる手術でした。
質疑応答の間にiMagDentでのCT撮影の実際を見学しました。iMagDentはフランチャイズ形式のレントゲン撮影センターで、数名の歯科医師などが出資し、共同でレントゲンやCTの撮影をうける施設で、すべてのメーカーのソフトに対応し、開業医の先生は依頼すればインプラントの埋入計画やステント製作までやってくれて、次回来院するときはすぐオペができる状態になっているということで、とても便利なシステムであると思いました。見学の後は昼食を食べながら、インプラント治療の復習を宮本先生が行いました。これは東京で行われたコースの復習で、インプラントの埋入術式や術後の管理などインプラント治療の流れの再確認となりました。この日はシャイアー先生と新しく入った先生の誕生日ということもありお昼にはケーキと歌のプレゼントがスタッフからあり、院内の雰囲気の良さを感じました。
その後インプラントの埋入のオペ見学の実習があり、マクガイアー先生は側切歯の内部吸収で抜歯、ソケットプリザベーションを行った患者さんへのインプラント埋入で、シャイアー先生は第一大臼歯の抜歯、ソケットプリザベーションを行った患者さんへのインプラント埋入でした。抜歯時ソケットプリザベーションを行うことでインプラント埋入時の抜歯窩の骨の状態がこれほどよくなるものかと驚きました。その後質疑応答があり、参加者からの熱心な質問が続きました。終了時、マクガイアー先生に持参した自分の全顎のレントゲンを見ていただき、今回見学した患者さんと近い状態を確認して頂き、治療計画を伺ったところ、想像通り抜歯してソケットプリザベーションが良いだろうとアドバイスを受けました。終わって帰ろうとしたところ「明日にでも歯を抜こうか?」と冗談交じりでおっしゃいました。恐れ多いので「大丈夫です」と答えてその日は終わりました。
11月3日(土)
研修4日目を迎えました。前日にマクガイアー先生に言われた言葉をホテルで一晩中考えていました。「明日歯を抜こうか?」本気なのかアメリカンジョークなのかどちらにとればよいか一晩中悩んでいました。意を決し、朝一番に「自分は歯を抜きたい気持ちがあります。もし研修プログラムや参加していただいている他の先生方のご迷惑にならなければぜひお願いしたいです。急なことですのでお断り頂いても全然かまいません。」と通訳の岩上さんについてきていただき伺ってみました。「考えてみるよ。」とお答えいただき、急な相談だから無理だなと心の中ではあきらめて講義に向かいました。
午前中はコーンビームCTの有用性について開業医のRick Heard先生の講義が始まりました。コーンビームCTがあることで格段に診断能力やより正確な治療が行えること、また放射線の被曝量を低減できることなどのメリットが説明され小休憩の時間になりました。するとシャイアー先生が近づいてきて、「昼休み前に型を取るから準備していてくれ。今日やるから。」と言われました。あきらめていたので本当に驚きました。昼前に型を取り、残りの講義を受け午後となりました。
午後はマクガイアー先生によるガイデッドサージェリーの講義があり、CTによるデータから3D画像を作りそこでインプラントの埋入計画をたて外科用ステントを製作し、インプラント治療を行うことでより正確に行えることや症例写真がありより理解が深まりました。そして無歯顎の患者さんへの6本のインプラントのガイデッドサージェリーのオペ見学が始まりました。おおよそ手術が終わり、縫合の手技に入ったところでシャイアー先生が「そろそろやるよ。」と声をかけてくださいました。手術の内容は上顎左右犬歯の抜歯とソケットプリザベーションという内容でおよそ一時間にて終了しました。術中の緊張はありましたが、痛みもなくスムーズに終わりました。言葉にできないぐらい感謝でした。
最後にグループ課題の発表でまだ報告していなかったDグループの福田幹久先生とAグループの松野英幸先生によりレポートの報告があり、質疑応答を行い終了となりました。この日はバスケットボールの公式戦がトヨタスタジアムであり観戦に行く先生方や、マクガイアー先生のスタッフと食事会が企画され、それに参加される先生方とそれぞれホテルを後にしました。
11月4日(日)研修最終日となりました。前日の手術の影響で夜中までは痛みもありなかなか寝付けませんでしたが、朝には痛みも和らぎセミナー受講も問題なく受講できるようでした。さすが専門医のトップであると思いました。この日の午前のテーマは咬合と歯周病ということでマクガイアー先生のオフィスに新しく勤務したジェミニアーニ先生により講義されました。多くの文献により準備され、咬合力で歯周病が始まるのではなく、活動性の歯周炎があると歯周組織の破壊が進むということ、歯周病の咬合調整だけによる治療や予防的な診断のない調整、ブラキシズムのための一時的な調整、咬合位置異常のための調整などは控えて、まず歯周病の治療を優先的に行うことの重要性が挙げられた。また、再生療法の前や術前に動揺を無くさなくては再生療法がうまくいかないことが挙げられました。休憩の後、シャイアー先生によるインプラントのプロビジョナルレストレイションについて解説があり、午後の実習について解説されました。昼食後、プロビジョナルレストレイションの実習が始まりました。アストラ社の全面協力のもと、セメント固定とスクリュウ固定のプロビジョナルの製作が始まりました。実際に説明用ビデオを実際の模型上で行うのは困難で受講生一同良い経験となりました。
セミナー最後の講義はマクガイアー先生による診療所のマネージメントについてという題で行われました。マクガイアー先生は歯周病診療のスキルも高いですが、診療室のマネージメントについても造詣が深く、とてもためになる内容でした。これだけを聞くことだけでもここに来た意味があるように思いました。診療室では常に笑顔でいること。患者さんやスタッフと良好な人間関係を築くこと。自分のビジョンを見つけ、スタッフや患者さんと共有し、自分のキャリアに責任を持つこと、本当にユニークであることを伝える、なぜ患者さんが来てくれるか考える、イメージを変える、人間関係を維持する、リソースを集中する、自分の状況を知ることなど、診療室を円滑に経営する必要なことが説明されました。
診療終了後はサティフィケート授与式でした。セミナーも終わり、各自がリラックスした中、食事が進み修了書とピンが参加者に授与されました。一回目はブロンズ、2回目はシルバー、3回目はゴールドと回を増すごとにピンの材質がステップアップするシステムであることが伝えられました。今回自分は2010年のPHIJから2回目の参加でしたのでシルバーになりましたがやはりうれしく感じられました。時間が過ぎるのを忘れるくらい楽しい時間が過ぎました。
今回2012PHIJオマハヒューストン研修を通して、歯科の知見も毎年更新され、2010年より新しいトピックが出てきてたり、2回目の開催ということでセミナーの内容も充実し、継続的に受講することの重要性を感じました。ぜひ、オーラルフィジシャンの先生方にも再受講を勧めたいと思います。
今回企画して頂きました熊谷崇先生、マクガイアー先生、シャイアー先生、宮本貴成先生、マクガイアー先生の診療所のスタッフ、シロナ社や、アストラ社のスタッフ、トップツアーの担当の方など多くのお世話になった方々に感謝いたします。またいつも研修参加をバックアップしてくれる医院のスタッフや家族にも深く感謝したいと思います。今回は自分の歯の治療も快く引き受けてくださいましたマクガイアー先生、シャイアー先生には言葉にできないぐらい感謝しております。皆様方の御恩に答えられるように、これからもしっかりと歯科医療に従事していきたいと思います。
グリーン歯科クリニック:松本 敏光
12日間のPHIJ研修が終わって、もう10日がたってしまいました。
本当に時が経つのは早いです。留守にしていた間にたまっていた仕事をこなすことで、アメリカに行っていたことを忘れてしまいそうな中、締め切りぎりぎりでPHIJ研修を振り返ります。昨年からオーラルフィジシャンセミナーを受講し、そこで紹介していただいたPHIJ研修ですが、海外セミナーにあまり参加したことのない私にとって、ぜひ参加したいと思わせてくれるものでした。ホームページを見させていただくと、とても厳しいセミナーということがわかりましたが、怠け者の私には勉強する良い機会と思い、思い切って参加することにしました。すると、遊びなら喜んでついてくる家内まで参加すると言い出し、思いがけず夫婦で参加することになりました。
臨床解剖学アトラスのノートン先生に、直接解剖を教えていただけたり、有名なマクガイア先生の診療室で、研修が受けられたりというだけで、十分にアメリカまで行った価値がありました。偉い先生方なのに全くそんな感じはなく、私たちのためにできるだけ多くのことを教えてくださろうとする姿勢に感動しました。日本でいろいろなセミナーに参加しましたが、なかなかこれだけ受講生のことを考えてくださるセミナーはないと思います。
一番学んだことは、基本に忠実に、確実な治療をしなければならないというということではないかと思います。日頃忘れてしまいそうなことをまた思い出させていただけたと感謝しています。残念だったのは、やはり英語が全くできないことでした。いろいろな場面で、英語ができたらなーと思ってしまいました。なんとかこの悔しさを忘れず、英語が少しでもできるようになってまた参加したいと思います。オーラルフィジシャンの先輩の先生方ともお知り合いになることができて、いろいろ教えていただけたことも大変な収穫でした。日吉歯科、マクガイア先生の診療所、オーラルフィジシャンの先輩方の診療所を目標に、いろいろやらなければならないことも見つかりましたので、家内とともに一生懸命がんばりたいと思います。お世話になりました皆様本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
グリーン歯科クリニック:松本 ゆみ
◆PHIJ2012に参加して
帰国して、1週間経ちましたが、セミナーのことを考えるといまだに気持ちが高ぶってきます。オマハとヒューストンでの研修は今までで初めて経験する素晴らしいものでした。嬉しい意味で予想と違って、とっても楽しくてわくわくして、帰りたく無かったくらいです。
10月26日から11月6日までという長期間病院と家庭を留守にすることは、主婦であり、院長でもある私にとって大変な決断でした。しかし、それよりもっと不安だったのは、英語が話せないことと、事前に聞かされていたこの研修の大変さでした。ところが、いざ行ってみると、講師の先生方や現地のスタッフの方々、ご一緒させていただいた先生方、その他本当に皆様に助けていただいて、全く困ることなく大変居心地の良い毎日を過ごせました。
Michael K.McGuire先生、Todd E. Scheyer先生、宮本貴成先生、Neil S. Norton先生は日本から来た私達に本当に沢山のことを教えて下さいました。
先生方は、講義や実習、オペ見学を通じて、少しでも多くのことを伝えようとして下さったし、尋ねたことには本当に些細なことでもていねいに答えて下さいました。私は、何よりも先生方のこの姿勢がありがたくてたまりませんでした。
講義の内容はペリオ、インプラントだけでなく、医院のマネージメントについてもふれられ、それもまた、大変素晴らしいものでした。帰国後スタッフにすぐ伝えたことが多くあります。
一緒に参加した先生方とは、東京では2日間だったので、あまり親しくなっていませんでしたが、今回の研修で大変親しくならせていただきました。
とくにオーラルフィジシャンの先生方には色々教えていただくことができました。
私は山形にセミナーを受けにいき、今年オーラルフィジシャンになったばかりなので、医院のなかで、まだまだ不安なことや悩んでいることがあります。先生方は大変親切に何でも教えて下さってとても参考になりました。こういうとても貴重な出会いも同時に得ることができ、私にとって、本当に素晴らしい研修でした。
お世話になった講師の先生方や仲川先生、日吉歯科の先生方、本当に有り難うございました。
医療法人健歯会五十嵐歯科医院:五十嵐 亮
◆2012年PHIJ オマハ・ヒューストンに参加して
この度、念願のPHIJに参加できたことに大変喜びを感じております。
2012年PHIJは6月東京での研修に続き、10月、11月はオマハ、ヒューストンにて行われ参加させて頂きました。
今迄、自分が行ってきた歯周基本治療、歯周外科、インプラント治療に疑問を抱えながら日々の臨床にあたっていました。
日本で行われている数々の研修、ハンズオンにも数多く参加してきましたが、決して満足のいくものではなく、それも日々疑問を抱きながら臨床を行い、また自分にも技術の限界や制限をいつのまにか抱くようになっていました。このままではいけないと感じてた矢先でした。
オーラルフィジシャンチームミーテングでPHIJを知り、ワールドスタンダードでエビデンスに基づいた歯周治療およびインプラント治療を自分でしっかりとしたビジョンをもってやることの重要性に気がつきました。
その同時期に米国歯周病専門医の中山先生との出会いもあり、当院のスタッフとDHハンズオンセミナーを受ける機会がありました。
中山先生からは私のオフィスに来て頂きスタッフと相互実習をして頂きました。
中山先生の実習も本当にすばらしく、歯周基本治療をあらためて勉強するきっかけとなりました。米国と日本の違いを感じ、もしかしたらPHIJでもっと新たなスタートをきれるのではないかと確信しました。
この度のPHIJはオマハ・クレイトン大学の解剖学実習では、ノートン教授、宮本教授が、Cadaverにて顔面の神経、静脈、動脈の走行など色々レクチャーして頂き、また自分たちでそれをCTで確認して実際にサイナスリフト、ソケットリフト、GBR、インプラント埋入を行いました。
Cadaverも最良の状態で非常に実践的で、普段確認できない動脈、神経、サイナスの状況が良く把握できました。今迄、不安を抱えながら行っていたOPEがこれからは、治療の確実性、安全性、有効性を高い技術に変えられていき、また患者様利益として還元できそうな自信となりました。本当に勉強になりました。
ヒューストンに移動して、McGuire先生のオフィスでは講義とライブサージェリーを見学しました。今迄日本の研修会で学んできたものとは全く別で材料や技術、エビデンスの違いを痛感しました。
今回の研修で、歯周外科やインプラント治療の理論や知識を、多く知ることができ、患者さんにとってベストの考えを伝えていく大切さを学び、またエビデンスに基づいた歯科医療についても再認識することができました。
本当に毎日が圧倒され痛感し、これから自分のオフィスでの診療体制、改革についてビジョンをもって構築していかなくてはいけないと感じました。
最後に、PHIJを開催いただきました熊谷崇先生、McGuire先生、宮本先生、Scheyer先生、コーディネーターの仲川先生、通訳の岩上さん、シロナならびアストラの皆様、本当に有り難うございました。
目白ヶ丘デンタルクリニック:藤澤 將人
私は矯正科出身のため、基本的な歯周外科やインプラントの知識が欠乏しておりました。
診断の幅を広げるためと参加いたしましたが、エビデンスに基づき予知性の高い診療を目の当たりにしてモチベーションが高まりました。
参加者の先生方もとても勉強家な方が多く、勉強不足の自分が恥ずかしくなりましたが、同時にもっと己を高めて患者さんに高い利益を提供できるようにならなければと刺激になりました。
一つだけ欲を言えば、オマハとヒューストンの間に復習をする期間が欲しかったです。
本来の日程ではあったということですから、今回はイレギュラーなのだと思いますが、ハイクオリティな授業内容を詰め込みすぎて、少々脳がパンク状態になりました。
ぜひまたの機会に参加したいと思います
日吉歯科診療所:井上 陽裕
◆PHIJ2012 オマハ・ヒューストン研修を終えて
今回私はPHIJ2012オマハ・ヒューストンプログラムに参加させて頂きました。
まずはこの海外研修に参加する機会を与えて下さった熊谷先生に感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございます。
プログラム全体を通して、企画に携わってくださった先生方、企業の方々の配慮がきめ細やかに行き届いていたので参加者はとても心地よく進行していくプログラムの中で勉強させて頂くことができました。
初日は世界的に有名な著書である「Netter’s Head and Neck Anatomy」の著者であるノートン先生から講義をしていただきました。顎顔面の各々の部位の解剖学的なランドマークを1つ1つ細かく説明していただき、特に上顎洞を中心にインプラント治療の際に重要な解剖学的所見に重点を置いて講義が進んでいきました。
その講義を基に2日目にはクレイトン大学にてカダバー実習が行われました。
解剖実習室に入り、献体となっていただいた方に深く感謝をしながら実習は進んでいきます。インプラント治療に携わったことない私にとって、始めての実習をとてもフレッシュなカダバーで行うことができるということはとても幸せなことであり、貴重な時間を過ごさせて頂きました。その間に、前日の講義に沿う形で顎顔面を内側から細かくノートン先生から解剖していただき、講義内容への理解がさらに深まりました。オマハ最終日にはクレイトン大学の放射線科の教授でもあるベン先生から講義をしていただき、CBCTの有用性を学ぶことができました。
オマハプログラムでは日常臨床における解剖学・放射線学の重要性、インプラント治療の一般的な手技を学ぶことができ、解剖学を基に臨床に取り組む大切さが理解できました。
3日間を通して1日中通訳をしてくださった宮本先生にはとても感謝しております。本当にありがとうございました。
ヒューストン初日、マクガイア先生のオフィスは閑静な住宅地の中にあり、診療所とは思えないような外観と迷路のような構造で、最初に日吉歯科を見学させてもらったときに近い感覚を感じました。講義、実習、ライブオペは包括的な歯周検査から始まり、基本的な歯周外科治療、インプラント治療まで全てがエビデンスに基づいて行われていました。講義の直後に行われるライブオペは、緻密な検査を基にたてられた治療計画、ていねいで確実な手技、正確に手際よく介助をするDA、また大勢の見学を快く承諾してくださったコンプライアンスの確立された患者さん、すべてにおいて一流で圧巻の一言でした。
また、マクガイア先生の最後の講義はいつも熊谷先生が言っていることと同じで、感動して常に鳥肌がたっている状態でした。歯科医療は健康産業であり疾患ではなく健康に目を向けて行っていくもの、各々の患者にベストな情報・ベストな医療を提供すること、健康観の高い患者を見極め医院を育てるチームの一員として一緒に取り組むこと、短期・中期・長期の目標を持つこと、歯科医師は医療者でもあり科学者でもあること、、、やはり一流とはこういう人のことを言うのかと再確認することができました。
最後になりますが、今回の研修を企画して頂いた熊谷先生、宮本先生、マクガイア先生、シャイヤー先生、講義を行って頂いたノートン先生、ベン先生、ジミニアーニ先生、クレイトン大学の皆様、シンディーさんをはじめとするPHPのスタッフの皆様、コーディネーターの仲川先生、通訳の岩上さん、スポンサーのアストラテック、シロナの方々、トップツアーの方々に厚く御礼を申し上げたいと思います。
自分の歯科医師人生のこんなに早い時期に2人の本物と出会うことができて本当によかった。まっとうな歯科医師になれるように頑張っていきます。
日吉歯科診療所:海野 陽子
◆PHIJ2012 オマハ研修感想文
私は、現在、日吉歯科・U20(20歳までの子供達に対する予防・小児・矯正)において勉強させていただいています。ここにいる限り、インプラントや埋伏歯に対する手術を自分が患者さんに対して行うことはおそらくないでしょう。しかし、そのような立場の私に、熊谷先生が参加することをあえて勧めてくれたのは、「どのような患者に対してもその個人個人の状態をしっかりと把握・診断し治療をすすめることの大切さの再確認」と、そして「把握・診断するための基礎となる解剖学や放射線学の理解をより深めること」ができるコースだったからだと思います。
1日目にノートン先生による解剖の授業があり、そしてその授業を踏まえた上での2日目の解剖実習は本当にいろいろな経験をすることができました。学生のときは、覚えた名称と実物を一致させることで精一杯という状態で終えてしまいましたが、今回は臨床とのつながりを理解できたように思います。午前中では、私たちのD班には歯周病専門医のメリッサ先生がついてくださり、上顎洞挙上、インプラント埋入、口蓋からの組織片の採取などを通じて細やかにたくさんのことを教えて頂きました。どの過程も状態のよいカダバーを用意していただいたので臨床に近い感覚で行うことができました。そして午後はノートン先生から、頭蓋部を正中で切断し、鼻中隔から組織をひとつひとつ分離していく過程を大きな画面に映してもらいながら解説してもらい、今まであまりよくわかっていなかった上顎洞周辺の構造・組織、それらがいかに繊細な造りであるか、そしてそれらに対する細やかな操作の必要性もよく理解できました。Dグループのメンバーは平均年齢も一番若く、そのぶん意欲にあふれ制限時間いっぱいまで協力して取り組むことができたと思います。Dグループの先生方、どうもありがとうございました。
3日目は午前中にダグラス先生に放射線画像診断についての講義をしてもらいました。特に印象的だったのが、「学校で学んだ解剖学が正しいとは限らない。病的でなくてもそのひと固有の構造があり、それらを判断して計画をたてることが大切である」という言葉でした。下顎管が複数あることも多いということや、教科書にはあまり詳しく載っていないが下顎前歯部における危険な部位があること、またCTを使って初めてわかるインプラントの失敗の例などをきいて、個々の患者さんについて、立体的に把握することの大切さ、しっかり把握しないままにすすめることの怖さがよくわかりました。
U20で勉強させてもらっていると、他部署との連携を必要とする疾患を持つ子供達がたびたび来院します。そしてそのような子供たち・保護者に対しては、不安をまず受け止め、そして補綴専門医や歯周病専門医、口腔外科専門医と連携をとりナビゲートするためにも、より広い知識が必要であるということがこの数か月間でだんだんと気づかされたところでした。そして、研修直前に日吉歯科の米国歯周専門医と米国補綴専門医から、先天性欠損の箇所にインプラントを1本いれるのに解剖学的視点やその他の視点から深く考慮したうえでのていねいな説明を聞く機会があり、このようなしっかりした診断・深い知識・技術を持ってインプラントオペと補綴を行っている歯科医師は果たして日本にどれだけいるだろうか? と感じていました。
そのような経緯を踏まえたうえでの今回の研修では、講師陣からのプロとしての能力と気迫を感じながら基礎の知識を深めるとともに、私はU20という分野において、しっかりとしたビジョンを描いて研鑽を積まなくてはならない、そのためにいまできることにしっかり取り組んでいきたいという気持ちを新たにできました。
今回の研修においては、まずは献体していただいた方とその御家族に感謝申し上げます。マクガイア先生、ノートン先生をはじめとする講師陣、そしてすべての講義を通訳して3日間、何時間もの間お話してくださった宮本先生には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。その他この研修のためにご尽力していただいたすべての皆様に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
医療法人インペリオクリニック:新福 泰弘
◆PHIJ2012 ヒューストンセミナーに参加して
私はこれまでに世界トップクラスといわれるあらゆるフィールドの歯科医師の海外セミナーに積極的に参加して来た。
主なものとしては、インプラントや顎顔面口腔外科では、フロリダのDr. Michael Pikosやイエテボリ大学のDr. Kirl Erik Kahnberg、Comprehensive Dentistryでは、シアトルのDr. John Kois、咬合治療では、アリゾナのDr. Frank Spearそして歯科経営ではメリーランドのDr. Roger Levinなどである。どのセミナーも現在の自分の歯科臨床そして医院経営のフィロソフィーやスキルのファンダメンタルズとなっている。
そして今回は、ペリオの世界的権威であるDr. Michael McGuireのセミナーであった。本セミナーに参加して、ペリオスペシャリストの視点から見た歯科臨床、特にインプラント治療のすすめ方を理解することができたことが私にとって最大の収穫であった。
すなわち、基本的なことは、これまで学んで来たどの先生が言っていることもほぼ同じなのであるが、今回のセミナー内容をこれまで学んだ口腔外科や補綴主導の治療プランの立て方や細かいテクニックと比較したとき、ペリオからの視点ならではの考え方や方法論を学ぶことができたので、そういったいくつかの相違点が発見できたことが収穫であったように思う。
具体的に言えば、これまでの私の臨床では、歯牙欠損部に歯槽骨と歯肉組織の大きなディフェクトが存在する場合、歯肉の減張切開を併用してブロック骨移植などでまずは歯槽骨の再建手術を行い、その後、歯肉組織のオギュメインテナンスーションを行うというステップで進めて来たが、McGuire先生の考え方では、歯肉を先にオギュメントし、その後、硬組織の造成を図るという考え方であった。
その考え方の根本にあるものは、リスクマネジメントであろう。すなわち、McGuire先生は、例えば、歯肉の減張切開によって裂開のリスクが高まることを回避するために、あるいは角化歯肉の喪失を防ぐために、先に歯肉組織を3次元的に増加させ、全体としての治療の失敗リスクを減らしているということであろう。
この考え方は、今後の私の臨床の引き出しの数を増やしてくれたものと確信する。McGuire先生やScheyer先生に感謝申し上げたい。
ただ、歯周病の全身的リスクに関するマネジメントに関していえば、例え世界トップクラスのペリオ専門医であっても、歯科医師としてできることに限界点が存在することをあらためて感じさせられた。
具体的には、糖尿病、骨粗鬆症、喫煙習慣などのような全身的問題に対して、歯科医師として、患者のそのリスクをマネジメントすることに大きなハードルがあり、現実的には、当該疾患の治療をMDに任せるか、あるいは、患者のコンプライアンスに任せるしか手が出ないということである。
すなわち、言い方を変えれば、これらのリスクに対するマネジメントは、歯科医師としては他力本願となって直接的にはほぼ何もできないということを意味しており、治療や予防の失敗の原因を、いたずらに全身リスクに押し付ける結果となる危険性があるように感じる。
しかしながら、別の角度からこれらの全身リスクを眺めてみると、医科における治療法の発展により、実は歯科医師として積極的にこれらのリスクコントロールへの参入が可能になってきているのである。
その具体例の一つとしては、ROS(活性酸素種)を減らし、患者の抗酸化力を高めること(Anti-oxidant System up-regulation)で酸化ストレスをコントロールすることである。なぜならば、歯周病やインプラント周囲炎の全身的リスクのほぼ全てが、じつはこの酸化ストレスによって惹起されていると考えられるからであり、また、継発して発生した酸化ストレスによって、まさにそれがリスクとして働き、歯周病等の治癒不全や予防効果減少を引き起こしていると考えられるからである。確実な酸化ストレスマネージメントが可能となれば、それは概ね全身的リスクのコントロールが可能となったといっても過言ではないと考える。
実際、医科においては、あらゆる疾患への酸化ストレスコントロールによる治療効果や予防効果に関するエビデンスはすでに多数集積されているのである。
このように医科においては、あらゆる疾患の予防や治療に酸化ストレスコントロールを導入して良好な治療成績が得られているというエビデンスには枚挙にいとまがなく、臨床に多数応用されているのであるが、残念ながら歯科においては、まだほとんど認知されていないのが現状である。
セミナー中に何度となく、McGuire先生やScheyer先生に、全身リスクをマネジメントするための歯科における点滴療法や栄養療法などの応用についてお話しさせて頂いたが、歯科治療としてのエビデンスにまだ乏しいと言う点やアメリカではライセンス的に歯科医師がivをすることができないという点からあまり興味を示して頂けなかったことについては少々残念であった。
今後、データを構築し、血液オゾンクレンジング、血液フォトセラピー、血液キレーション、高濃度ビタミンC点滴などの点滴療法や各種栄養療法そしてホルモン療法などが、これまで歯科医師には手が出せなかった歯科疾患の全身的リスクをマネジメントするための有効な手法として認知され、そして歯科界に広がっていく必要性をあらためて強く感じたセミナーであった。
特に、我が国においては、歯科医師によるiv療法や栄養療法が、口腔内の問題の治療や予防の目的であれば合法的に行える訳であるので、導入しない理由がないと思う。
さらに、近年注目されている、アンチエージングという観点からも、酸化ストレスコントロールこそが究極のアンチエージングであると言う事実から考えて、歯科クリニックで同時に目指すことができるのである。
限られた方向からだけで物事を見ていると、どうしても見えてこない部分があるのが世の常である。歯科臨床においてもあらゆる方向から見て考える柔軟な姿勢が不可欠であると思う。すなわち、医科と歯科の垣根を越えた視点を持ち、リスクマネジメントやリスクコントロールを歯科医師自らが実践していく時代に入らなければならないと思う。
もう一つ、今回のセミナーに参加してあらためて感じたこととしては、何かを学ぶ時には世界の一流から学ばなければ意味がないということである。そうでなければ、結果的に真理、真実に行き着くまでに回り道やむだが多くなり、時間とお金の浪費に繋がるからである。人生は短い。
そういった意味で、このPHIJセミナーは、世界一流のペリオの考え方や治療法がエビデンスベースに体系的に学べるコンテンツになっている部分がとても良いと思う。
特に、これから本格的にインプラント治療をスタートする歯周病専門医やGPには、インプラントの基礎から臨床まで、そして解剖まで含めて10日間程度の短期間に集中して学べるので、国内の類似セミナーに参加するよりも格段に有益ではないかと思う。通訳のレベルも高く、耳に入りやすく頭で理解しやすいと感じた。
末筆になるが、このセミナーへ参加するきっかけを与えてくれたデンツプライIH社長桐山氏とクレイトン大学宮本氏に心より感謝申し上げたい。
医療法人恵会上田歯科医院:上田 倫生
◆PHIJ2012に参加して
オマハとヒューストンは初めての訪問地で、寒がりの私はまず気候を心配しました。平均気温が一桁のオマハへの防寒は非常に気を使いまいたが思ったより寒さが厳しくなくよかったです。
クレイトン大での解剖や、カダイバーの実習には新鮮でかつ基本的な事や口腔関連の鼻腔領域の詳しい内容には本当に勉強になりました。宮本先生の熱心な講義、同時訳大変だろうなと思いながらも熱意に圧倒されながら、耳によく入ったと思います。ノートン先生の講義や解剖実習のやり方、部位の明示方法など懇切ていねいと言う言葉がぴったりなほど説明して頂き感謝しております。ヒューストンのマクレガー先生のオフィスのハイセンスな調度品やスタッフの体応の一つ一つに自信と責任感の雰囲気が感じられ羨ましく、目標にしないといけないと思いました。
講義内容やライブオペの内容は言うまでもなく、基本的な事からエビデンスに従っての説明で、当たり前なのですけど、今の自分の治療内容もすべてエビデンスに基づいた内容で、かつ常にエビデンスに基づいた治療・処置を心がけることの再確認をした内容でした。
12日間の研修は体力的には厳しかったです。でも内容は有意義でまた新たな内容を身につけられた事は感謝すべきことでありました。経験豊富な先生方からの色んな情報内容も凄く新鮮でした。
この場をかりて、色々世話をして下さった先生方に感謝します。
また、早速5月のオーラルフィジシャン育成セミナーを申し込みました。
参加された先生方、シロナやアストラの方にあらためてお礼と感謝を申しあげます。